Seeds of the art

【Seeds of the art Vol.6】吉岡徳仁 アートの領域を超えて世界に架ける虹の橋。

ARTが大好きなアートラバーとしては、子供の頃から色々と沢山のアーティストの展覧会や作品に出会ってきました。
積極的に自分から観に行ったものや、友人や知人、ネットから偶然知って出逢えた素晴らしい作家さんや作品も数々です。
出会い方は様々で思い出せないくらいの量ですが、意外と印象に残っている作家や作品は少なく、数えるくらいしかいないことに自分でも驚きます。

その中でも忘れられない感動的なインスタレーション作品は

2013年に東京都現代美術館で開催された吉岡徳仁さんの「クリスタライズ展」です。「Crystallize =形を与え、結実させる」という意味の展覧会のサブタイトルは「人の記憶に眠る自然の姿を結実させる」でした。

吉岡さんの実質的には初の大規模な個展となる「クリスタライズ展」では、本当に一つ一つの作品のクオリティが高く素晴らしい作品ばかりでした。

中でも印象的だったのが「虹の教会」という作品です。

美術館のかなり高い天井から床までに500個の直方体プリズムが積まれ、1光源からの光を屈折させて虹色のプリズム光を空間に生み出すというインスタレーション作品でした。

「光」そのものをデザインすることが今までにない新しい概念でありチャレンジングな作品空間でした。

しかし、そこはセンセーショナルなのに不思議と懐かしく心落ち着く普遍性を感じさせるのです。

シンプルで真っ白な空間に生まれる虹色のプリズムが、幾重にも重なる光の波となって空間や私自身の体と心に届き、小さな頃に見た虹の記憶や感覚など、心深いところを刺激してくれてとても感動できました。

7年前の体験でしたが、思い出すと未だに当時の感動が蘇り、そこから新たなインスピレーションを今も与えてくれています。長い時間が経っても、それぞれの人の心の中で生き続ける作品こそが本物であると私は思います。

現代でこのような深い感動を与えてくれる作家さんは稀有な存在であり、貴重なメッセンジャーなんだなぁと改めて思いましたので、すでに有名な吉岡徳仁さんではありますが今回Seed of the Artでも私なりにご紹介させて頂きます。

2020年 TOKYOオリンピック 聖火リレートーチのデザイン

吉岡徳仁さんは、最近では2020年TOKYOオリンピックの聖火ランナーが持つ桜型のトーチのデザインが話題のお方です。

https://www.tokujin.com

吉岡さんの経歴は素晴らしく、代表作も多いのでこちらでは紹介しきれませんが、肩書きは工業・空間デザイナーとよく紹介されています。

その活動領域は私が感じるにはARTそのものでありますが、逆に一つのジャンルに縛られることなく自由にボーダレスにArt、デザイン、工業、科学、自然、宇宙・・・など多岐に渡ります。

なぜ軽快なまでにジャンルを超えて架け橋となれるのか

吉岡さんの作品は、普通それぞれが自分自身のジャンルに没頭してしまいその深みから中々抜け出せないでいる横で、さらりと軽快にジャンルを超えていきます。

さらにその美しい作品で観るものの心や全く違う業界やジャンルに”光のエッセンス”に満ちた美しい架け橋を渡して新しい価値観を生み出し、次の時代を切り開くきっかけを提供してくれています。

では、なぜ吉岡さんの作品は軽快なまでにジャンルを超えて架け橋となれるのかを考えてみると、その作品が今までに見たことのない新しい世界の扉を開く斬新さを兼ね備えているからだと思います。

特筆すべきは彼の作品に共通する「光の表現」が他に類を見ない「美」を表現されていることだと思います。

「光」とは、人間以外の動物・昆虫・植物などこの世に存在する全生命が本能的に希求する、いのちのエッセンスだと思います。その神秘的だけど、あまりにも当たり前に存在する「光」を表現することは難しいはずですが、吉岡さんの作品では言い切るようにシンプルで明快に表現されているところが凄いと思います。

このような本質的な作品は、時を超えても言葉では言い表せない深い感動や印象を観るものに残し、作品を観た時に、その作品のメッセージという「種」を心に植え付けてくれるのです。

少年、少女のような純粋性や素朴な疑問を手放さずに生み出している作品

作品を観てからの時間の経過と自分自身の体験が栄養分となり、与えられた「種」は芽吹き、開花し、そこに自分自身で生きた滋養を与えることによって実っていきます。このような、質の高い「種」を与えてくれる作家さんは、きっと数えるくらいしかこの世にいないのかもしれません。

私にとって本質的であることとは、この世界の存在の「核」に迫る何かを感じさせてくれることです。
吉岡さんの作品から感じられる「核」に近い光のエッセンスは、それを体験する者の心や体、いのちに触れてその「何か」が自分自身を深くインスパイアして目覚めさせてくれるのです。

彼の作品には、何処かに宇宙や自然界に通じる神秘的な「美」を起点に発想され、それを紐解こうと誠実に紡がれた跡があります。作者が、発想の「核」を見つけてから一つの作品という”答え”へと導く集中力と持続力。そして少年、少女のような純粋性や”センス オブ ワンダー”である「なぜ?」という素朴な疑問を手放さずに作品を生み出しているからこそ響いてくるのだと思います。

吉岡さんの創作は、つくられるプロセスで発生する偶然、自然作用を柔軟に取り入れながら、足し算になりがちな創作のプロセスに冷静な視点と心を保って、引き算をして究極的にシンプルな作品に仕上げているように感じます。だからこそ、出来上がった作品そのものが、本質的な光を宿す存在になっているのではないでしょうか。

そして作家自身と観る者の心と深く対話しながら創作していくプロセスが、作品に美しく幸せに結晶化し、文字通り「クリスタライズ」されています。作品という結晶に触れることで、観るものは自分の内的世界と繋がり、自分の中で眠っていた忘れ去られていた大切なエッセンスが結晶化し始めるきっかけを受け取るのです。

吉岡さん自身は、インタビューの中でこう語っていました。

「世界にはまだない、新しい概念を生み出したい。未だ見ぬ未来の「定番」をつくりたい。」と。

いつの時代も多くの人は変化を恐れ新しいものを受け入れ難いですが、その恐れさえも超える「美」と「説得力」の前では素直に「新しさ」を受け入れ感動さえします。そして受け入れられた新しく美しい価値観は「未来の定番」へとしなやかに変化していくのです。

動画やインタビューから拝見する吉岡さんの今までとこれから。

失敗を何度も繰り返し、認められるまでの辛い時期を乗り越えてから得た成功と、そこに溺れずに日頃からプロフェッショナルとして自分自身を鍛えられている真摯なお姿

大切なのは「形ではなく気持ちをデザインすること。」「デザインの根本は使う人の気持ちであること。」というポリシーや、子供達からも学ぼうとする姿勢など、人の気持ちに寄り添う優しさや謙虚さを感じ、とても素敵なお人柄で心から尊敬できる、これからもずっと応援したい方でした。

きっとそのお人柄と努力と才能で、これからも世界と人の心から消えないデザインや作品を生み出し続けてくれるでしょう。

私も、吉岡徳仁さんの作品から得たインスピレーションとARTの種を大切に育てて実らせていこうと思っています。

素晴らしい作品を世に生み出してくれている吉岡徳仁さんに心からの尊敬と感謝を込めて。

皆様も吉岡徳仁さんからのARTの種を受け取ってみてくださいね。

動画やインタビューのリンク

以下、動画やインタビューも是非ご参考にしてください。

吉岡徳仁 情熱大陸

https://youtu.be/vjp1TEn_GI4

Swichの対談の中で「クリスタライズ展」の内容が動画で観れます。

https://www.youtube.com/watch?v=beeI3U9GaCo&t=2s

国立新美術館にて「ガラスの茶室 – 光庵」が公開されています。

パリのオルセー美術館にコレクションされているガラスのベンチ「Water Block」を併せて展示されているので、吉岡さんの作品を体験できる貴重な機会ですので是非。 https://www.nact.jp/2019/chashitsu/

SPECTRUM  https://www.youtube.com/watch?v=LNkpCbmeByg

もしも吉岡さんがオリンピック会場をデザインしたら? https://www.youtube.com/watch?v=Nw76tDiK0mE

オリンピック聖火リレー桜型トーチデザイン
https://www.youtube.com/watch?v=QnUwksK-ikI

吉岡徳仁インタビュー
https://www.cinra.net/interview/201507-yoshiokatokujin

吉岡徳仁作品まとめ
https://5ringo.com/yoshioka-tokuzin/

>>【 Miracle Islander 素福 の Seeds of the Art